映画を中心とした興味
by sonobasho
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伊藤大輔監督「春琴物語」を見て
春琴物語 '54 大映東京
監督:伊藤大輔 出演:京マチ子/花柳喜章/杉村春子/船越英二
木村威夫美術監督作品大回顧展@ポレポレ東中野にて

鬼気迫るとは、このことか。
終盤にて、佐助が決意をするに至るシーン。
針山を前に座っている佐助が真横から捉えられ、その背景には、上方の小窓から洩れる光に照らし出された靄(もや)が立ち上っている。
ここでちょっとの間、佐助は逡巡してしまうのだが、後ろに見える靄がしだいにわずかながらも強い調子に見えだしてきて、画面に異様な雰囲気が漂う。
そして、鮮烈なカットバックが入り、針山、さらには針を手指でしっかり持つところ、と徐々にその決行へと近づいていく緊迫感は、心臓に悪いというか、見ていて本当に痛々しく切なすぎる。思わず「やめてくれ」と叫びたいくらいだった。

前半では、移動撮影の闊達さにより、大阪の薬種問屋という一種のミクロコスモスに誘われてしまう。
また、特記しておきたいのは、ラストシーンの素晴らしさ。それまで、ほとんどが問屋街を舞台に展開していたのとは対照的に、野外の風景が提示される。ある意味で取ってつけたと言えばそれまでであるが、逆にそこにこそ監督のねらいがあるのではないかという気もする。その直前の馬車がトンネル内を行くシーンも短いながら鮮烈だが(深い暗闇とわずかの光明の微妙な均衡、そしてその中を移動する馬車!)、次に一転して開けた眺望を目にした時の解放感、あるいは盲目の2人の脳裏に浮かぶ別天地のイメージかもしれないと思うと、ある意味でのハッピーエンドへ昇華させられる思いがする。

大店の盲目のお嬢という役どころで、京マチ子の美貌がまさに人形のように引き立っている(全編に渡って彼女の目は、閉じられたままだ。よく一般に人の容貌の魅力は瞳にあるというようなことを言ったりするが、京マチ子のあの大きな目はかなり魅力的であることは確かだと思う。しかし、この作品では、それは一切封じられているのだが)。気位の高さといい、終盤での佐助に対して高慢さを貫徹せざるおえない切なさといい出色の演技だと思う。
杉村春子の俗物ぶりも哀しい性(さが)を感じさせて、よい。

ちなみに、7/19の上映を見たが、終映時に木村威夫氏が登場して、次のように語った。
・ちょうど今から50年前の作品で非常に懐かしい。
・まだ右も左もわからなかったが、上方の問屋を初めて手がけるということで、いろいろ調べてデザインした。
・京マチ子の衣装の着物については、当時の金額で1000万円をかけて、この作品のために全て作らせた(染めや織の段階からオーダーメイドしたもの)。
(この回は、もともとトークの予定はなかったが、その後の回でトークをするために来場されていたようだ。大変お元気そうだった。京マチ子のことを、「京マチちゃん」と言われたのが印象的だった。)
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by sonobasho | 2004-07-20 00:58 | どう観たか?
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