映画を中心とした興味
by sonobasho
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若松孝二監督「餌食」についての与太話
「日本アウトロー伝説 第三弾 絶体絶命」@ラピュタ阿佐ヶ谷にて、「餌食」若松孝二監督を観た。

餌食  '79年/獅子プロ/カラー/80min
■監督:若松孝二/脚本:荒井晴彦、高田純、出口出/撮影:志村敏夫/音楽:ピーター・トッシュ、マトゥンビ
■出演:内田裕也、多々良純、宮田明、栗田洋子、水島彩子、鹿内孝、草薙良一
アメリカ帰りのロック歌手が“レゲエ”を土産に帰国。世間に受け入れられない怒りが大量無差別殺人へと向かう…。“ロック馬鹿”内田裕也が、自らの思いを投影したミュージシャン役で主演。ふやけた時代と現代人に牙をむく! (チラシより)

なかなか興味深い点がいろいろあって、面白く見ました。
おそらく、全然違うように見てしまっているような気もするので、あくまでも与太話ということで……

今、例えばビデオ題名をつけるなら(笑)、次のような題がいいんじゃないかと思ったりしました。
A案 「裏 ロスト・イン・トランスレーション」
B案 「メイド・イン・ハラジュク」

A案は、アメリカ帰りの内田裕也が東京という都市に対して異化的な視線を向けており、散りばめられた東京の実景シーン(特に前半)はまさに「ロスト・イン・トランスレーション」ばりなので(新宿ビル街や地下鉄など似通っている、同じ東京だから当然のことかもしれないが)。自国のことゆえ、エキゾチシズムをベースにした「不思議の国ニッポン」という違和感でなくて、社会批判を含んだ「トチ狂ってるぜ にっぽん」という違和感なのかもしれない。
そして、内田裕也はじめ、彼に住家を提供し奇妙な共同生活を送る爺さん (多々良純)や、内田裕也をそこに連れてきた少年(宮田明) や出入りする少女(栗田洋子)たちは、いわばはみ出した存在として、ある意味でまるでストレンジャーのように社会と言葉が通じないというギャップを感じているのではないか。例えば、内田裕也は今は大手プロモーターとなっている昔のバンド仲間に対して、レゲエミュージシャンの来日公演を持ちかけるが、通俗的に堕落したプロモーターとは会話がかみ合わない。また、少女(栗田)はピンサロでバイトしており、おやじ客にうまいこと言って多目に食べ物をオーダーさせては余った分を少年や内田裕也のために持ち帰ることにしているが、これなどはギャップを逆手にとって積極的に利用しているともとれる。
そうして、この都市において、不可視的なストレンジャーとして生きていくには、レゲエを聴きこんだり、旧式のピストルを日々取り出しては磨いたり、あるいは単車で疾走したりしなければ、ままならないのかもしれない。

B案は、少年少女のはみ出した感じの切なさ、ある種のストリートワイズによって野良猫のように生きていく姿が、ふとフルーツ・チャンの「メイド・イン・ホンコン」を思い起こさせたので(音楽業界の堕落をめぐる内田裕也のパートはさて置くとして)。そして、主に舞台となっている場所は原宿だが、今はなき同潤会アパートが彼らの生活の場であり、サンクチュアリとなっている。この物語には3世代の「忘れられた人々」が描かれている訳だが、その第一世代にあたる爺さんは、おそらくずっと同潤会アパートに暮らし続けてきたのだろう、外界の繁栄には背を向けて。すっかり古びて時代遅れになってしまった同潤会アパートと同じように、爺さんはただ朽ち果てていくばかりなのか。そうして、最後のシーンは表参道の歩行者天国だが、内田裕也ならずとも発狂しかねない何かがそこには渦巻いているようにも思える。

ちなみに、1979年6月23日の初公開時は、東映にて「地獄」(神代辰巳監督)の併映として2本立上映されたということを考えると、なんだかクラクラしてしまう。
※「地獄」は7/31に新文芸坐のオールナイト(地獄三昧プラス1)でも上映されますが、壮絶な狂気をはらんでいてちょっと絶句してしまう。

また、検索の駄賃として見つけたのですが、「餌食」で音楽が使われているピーター・トッシュ自体、かなり過激なメッセージを音楽にのせ「歩くカミソリ」と言われるような存在で、1987年に強盗の凶弾に倒れ(あるいは謀殺か?)…なんてことで、ドキュメンタリー映画も作られていたりします。
Stepping Razor RED X
監督・脚本:ニコラス・キャンベル|出演:ピーター・トッシュ,ボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズ,ミック・ジャガー
ボブ・マーリーと並ぶレゲエ最重要アーティスト!永遠のルード・ボーイ、ピーター・トッシュのドキュメンタリー映画!!
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by sonobasho | 2004-07-15 04:13 | どう観たか?
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